小説

「じゃん!!見てかがみ!?私昨日ユノランジムで二つ目のバッジゲットしてきたよ?」

朝からかがみに手にしたばかりのバッジを自慢げに見せつけるのは、イノキ山で出会った少女・エミリィだ。

ポケモンセンターのテレビ電話越しに二人は近況報告をしていた。

「あのね、エミリィ・・・私これからジム戦なんだわ。そういうモチベーションが下がることいちいち報告しないでよ〜!」

「へ?そうなんだ・・・!!でも普通ライバルからこういう報告受けたら逆に負けないぞって燃えちゃわない?」

「うーん、確かに負けてはいられないなとは思うが・・・」

「はは・・・ま、頑張って!じゃあ、試合前にあんまりかがみのテンション下げちゃ悪いし、そろそろ・・・」

「ねぇ・・・エミリィ・・・」

「へ?」

気を遣い電話を切ろうとしたエミリィをかがみが止めた。

「エミリィ、ずっと一人で旅してんの?」

「まぁ・・・人数はいた方が楽しいと思うけどね?っていうか若干ながら、かがみたちと一緒に行ってもいいかなとは思ったけど、同じ目標目指してる人と一緒に旅するってのも変な話かなとは思ったし・・・。」

「・・・そう。まぁ頑張るわ!だからエミリィも頑張ってね?」

「うん・・・。じゃ、報告ヨロ!」

そう言いかがみは電話を切った。



こなたのカミンアジム挑戦から1日が経ち、今日はかがみの挑戦となる。

「かがみ、どのポケモン出すのか決めた?」

「うん、とりあえずはね?」

昼過ぎにポケモンセンターを出て、ジムに向かうかがみ達。

ジムの前では早くもアビマルがかがみ達・・・かがみの事を待っていた。

「おぉ来たか!!」

「・・・はい。」

アビマルと目が合うと途端に身構えてしまうかがみ。

正解である。

しかし、かがみ達の予想に反しアビマルはスッと背を向けると、ジムの中へと入っていった。

あまりにそっけない態度にかがみはある意味不意を打たれてしまった感じだ。

「アビマルさん、流石にバトル前になるとお姉ちゃんに言い寄ってこないね?」

「まぁあれでもジムリーダーだし領分を弁えてるんだろうね?」

「ふぅ・・・とりあえずは一安心よ。」

安堵の息を吐き、気分新たにかがみはジムの扉を開けた。



「・・・・・」

「あぁ・・・」

かがみは絶句した。

目の前に広がるのは純白のウェディングドレス。

そして

いつの間にかタキシードに身を包んでいたアビマルがそこにいた。

「さぁ、かがみよ。待ってたぞ!さぁ今日はジム戦だ!!互いに愛する者同士!!しかし、今日はその事は忘れて全力を・・・」

「あの・・・」

アビマルの熱弁をかがみは遮ると、先ほどから目をチカチカさせているウェディングドレスを指さした。

「これはなんすか?っていうかその恰好・・・あぁ余りに突っ込み所満載でもうどれから突っ込んでいいのやら・・・・ひとまず言いたいことは・・・」

「なんだい?」

今、この瞬間でもアビマルの心臓はドキドキと激しく脈打ってるに違いない!


「カエレ!!」


アビマルの純真(?)な恋心を一撃でかがみは粉砕した。



らき☆ぽけ

第13話「かがみVSアビマル!カミンアジム格闘バトル!!」



かがみの怒声と共にドレス云々は強制撤去され、さっさとかがみとアビマルの公式試合が始まった。

「ワンリキー、”クロスチョップ”!!」

「ムクバード、”つばめがえし”」

互いの技が激突し合う初戦はかがみのムクバードとアビマルのワンリキーの試合だ。

前回のイノキ大会で進化を遂げたムクバードは、順調にワンリキーにダメージを与えていく。

「ムクバード、”かげぶんしん”!!」

「ムクバッバッバッ!!」

ムクバードは”かげぶんしん”でワンリキーの周りを囲み始めた。

「”つばめがえし”!!」

「ワンリキー跳べ!避けるんだ!!」

ワンリキーは飛び上がり上空へ逃げようとしたが、残念・・・。

ムクバードの方が幾分か早い+加速攻撃の”つばめがえし”で、上空へ逃げる前に攻撃を喰らってしまった。

「キー・・・」

「ワンリキー、戦闘不能・・・。」

開始早々アビマルは一匹目のワンリキーを失ってしまい、かがみがまずリードする。

「流石、かがみ!お前の攻撃一発一発に愛を感じるぞ。」

「気持ち悪いこと言わないで早く2体目出してください。」

「・・・・むぅ。ならば、私の2番手はこいつだ!ハリテヤマ!!」

「ハリー!」 一瞬の沈黙の後にアビマルが出したのはなんと昨日大将として登場し、こなたのヒコザルを苦しめたヒコザルだった。

「まさか2体目にハリテヤマとは・・・。」

流石のこなたもこの展開は予想にしてなかったらしい。

当のかがみもいきなりに強敵出現に動揺してしまう。

「・・・・ふん!ムクバードの体力はほぼマックス!そんな時に出てくれるのは返って好都合かもね。」

かがみは思考を前向きにし、冷静さを早くも取り戻した。

「ムクバード、”つばめがえし”!!」

「ハリテヤマ、”つっぱり”!!」

ハリテヤマの突きとムクバードの”つばめがえし”が激突し、双方の攻撃を弾いた。

「負けないでムクバード連続で”つばめがえし”!!」

「負けるなハリテヤマ!!」

ムクバードハリテヤマの力強い”つっぱり”に負けじと、相性抜群の”つばめがえし”で応戦する。

技の相性のカバーもあってか互角の競り合いをみせる。

「ムクバード、”でんこうせっか”!!」

埒があかないと踏んだのかかがみがいち早く攻めに出た。

ムクバードは一旦退くと、先制攻撃でハリテヤマにアタックする。

「ムクバァ!」

「ハリ・・・!」

見事”でんこうせっか”が決まりハリテヤマにダメージを与える。

しかし、ハリテヤマは負けじとムクバードの体をつかんだ。

「しまった!!」

「いいぞ、ハリテヤマ!そのまま”かわらわり”だ!!」

ハリテヤマは左手でムクバードを掴み、抑えつける。

そのパワーにムクバードは抜け出せない。

そして、もがくムクバードを余った右手の”かわらわり”で見事に決めた。

ハリテヤマが手を放すとそこには目を回し、ダウン状態のムクバードがいた。

「・・・ムクバード!」

「ムクバード、戦闘不能。」

「あぁ・・・流石ハリテヤマ・・・強いね?」

「お姉ちゃん、どうやってあのハリテヤマを倒すんだろう?」

「・・・手はいくらでもあるけどね?私の時と違って相性も特に問題はないと思うし・・・。」

そういうこなたであったが、次にかがみが選んだのは・・・

「ミミロル、頼んだわよ!!」

「ミンミー!!」

「ミミロルか・・・・まぁクチートが相性悪い上に攻撃面でもハリテヤマに勝てない技ばかりだから当然の選択だけど・・・・ここの場面でミミロルかぁ」

かがみのことだ。捨てゴマというわけではないだろう。

恐らく何か対策があるのだろう。

事実、ミミロルは”とびはねる”というひこうわざも有しているのであながち間違った選択ではない。

しかし、ハリテヤマは真っ向から立ち向かったところで勝てる相手ではない。

それはかがみも重々承知である。

こなたはそんなことを気にしながら二人の試合を見守っていた。



「ミミロル、勢い付けてからジャンプ!!」

ミミロルは、1,2とステップを踏みながら高々とジャンプしハリテヤマの上をとった。

「よし、そのまま”かげぶんしん”から”とびはねる”!!」

ミミロルは分身を増やしながら、ハリテヤマの頭上に落ちてくる。

「ハリテヤマ、”ふきとばし”!!」

ハリテヤマは目一杯息を吸い込み、一気に吐き出した。

その驚異の肺活量によって身体の軽いミミロルは吹き飛ばされてしまった。

「うそ!そんな技まで・・・ミミロル!」

前のこなた戦では見せなかった技に驚き、戸惑うかがみ。

「”つっぱり”!!」

吹き飛び、地面に墜落して行くミミロルをハリテヤマの突きが容赦なく襲う。

「ミー!!」

まず、一発目で吹き飛ばされるミミロル。

すかさず2発目が迫る。

「ミミロル、ジャンプで避けて!」

「ミ・・・ミィ!!」

かがみの指示で慌ててジャンプをしようとするも寸でのところで2発目が足に当たってしまい、上空でバランスを崩してしまった。

「”ピヨピヨパンチ”!!」

「かわせ!!」

「ハリ・・・ハリィ・・・!」

不安定な姿勢で攻撃をしたのが幸いしたのか、ハリテヤマの見事裏をかき、”ピヨピヨパンチ”が命中した。

「よし、ラッキー!!」

「くっ!ハリテヤマ、”つっぱり”!!」

しかし、ハリテヤマの様子がおかしい。

目が虚ろで指示された”つっぱり”の構えをとらない。

「まさか・・・ハリテヤマ・・・」

アビマルの予感は的中した。

突然ハリテヤマは壁に”つっぱり”を打ち始めた。

そう、混乱である。

「かがみ、これはチャンスだよぉ!」

「そ、そうね!ミミロル、”とびはねる”””」

こなたの声にかがみは勝利を確信し、ミミロルに抜群技の”とびはねる”を指示した。

「ミー!!」

ミミロルは、高々と飛び上がると、ハリテヤマめがけて急降下していく。

その時だった。

「ハリ!!」

「ミ?」

「げ!!」

今の今まで壁を”つっぱり”していたハリテヤマが急に上空のミミロルをにらみつけた。

そして、”つっぱり”の構えを再びとった。

それでもミミロルの攻撃の方が早く、ハリテヤマは頭に一撃をもらってしまう。

「ハリ・・・!」

「ミ・・・?」

負けじとハリテヤマはミミロルの攻撃を受けた瞬間に強力な”つっぱり”でミミロルを吹き飛ばした

吹き飛ばされ、壁に体を打ち付けるミミロル。

この時点でミミロルは戦闘不能となっていた。

「ミミロル・・・!!」

「惜しい!」

「こなちゃん・・・あれ!」

まさかのハリテヤマの反撃にこなたは指を悔しそうに鳴らすが、隣のつかさは逸早く気づいていた。

そのよろめくハリテヤマの姿に・・・。

「まさか・・・」

ミミロルを抱きかかえるかがみの顔に期待の表情が垣間見える。

そして・・・

「ハ…リ!!」

かがみの期待通り、モロに弱点である”とびはねる”を喰らったハリテヤマもそのまま倒れてしまった。

「ミミロル、ハリテヤマ両者戦闘不能・・・。」

「やったよお姉ちゃん!」

まさかの出来事に早くも喜びを表すつかさに対しこなたの中の緊張の糸は途切れていない。

「アビマルさんのハリテヤマは確かに強者だけど他のポケモンたちもかなりの実力者!まだ安心できないよ?」

「そ、そうだね!」

こなたの言葉につかさの顔にもまた先ほどの緊張感が戻ってきた。

そして、かがみにも・・・。

どうやら、ハリテヤマが倒れ少しながら安心していたらしく、聞こえてきたこなたの言葉に自身の気を引き締める。


「頼むわよ、チコリータ!!」

「チコッ!」

かがみ、3体目はやはりチコリータだ。

対するアビマルの最後のポケモンは・・・

「さぁ、パワーアップしたお前の初陣だ・・・。」

アビマルはボールを見ながらそう呟くとこなたはその中のポケモンが何か分かったらしく、眉間に眉を寄せた。

「まさか・・・アビマルさんの最後のポケモンって・・・」

「こなちゃん、分かるの?」

「うん、多分・・・」

こなたがポケモン名を言おうとした瞬間、アビマルは勢いよくモンスターボールを投げた。

「いけっ!チャーレム!!」

「レム!」

「・・・へ?」

「やっぱし!」

アビマルが最後に出したのはめいそうポケモンのチャーレムだった。

予想的中で顔をしかめるこなた。

それに対し、見たことないポケモンに反応がイマイチのかがみ。

とりあえず”分からないことはポケモン図鑑に!”の精神でかがみはポケモン図鑑を開く。

「えっと・・・下半身がハーレムパンツのような膨らみ方をしており、瞑想を繰り返すことで第六感が発達していく。・・・アサナンの進化形・・・アサナン・・・?」

かがみはその聞き覚えのある名前で、ようやくチャーレムの正体とそのレベルを知った。

「アサナンって昨日のエスパー使いのオムツ履いてた子よね!?その進化形って・・・めちゃめちゃつよいんじゃない?」

こなたの方を振り向くと、親指を立ててくれている。

その瞳からは同情しているかのような感じが察しられる。

その、こなたの反応でかがみは肩を落とした。

恐らく、進化したのは昨日こなたとのバトルを経てからだろう。

昨日、ジャンケンに勝っていれば・・・などと器の小さいことが一瞬頭によぎった

「えぇい!やってやるわよ!チコッ!」

「チコー!!」

もうヤケクソである。

「チャーレム、存分にやってこい!」

「レムゥ!!」

チャーレムはどこかしら少し楽しそうな表情が見られる。

進化してからか少し戦闘狂にでもなったのだろうか?

「チコッ!”はっぱカッター”!!」

「チャーレム、”サイコカッター”!!」

チャーレムは念で作りだした刃は”はっぱカッター”を切り裂くとそのままチコリータ自身に命中する。

”みきり”や”ねんりき”などの防御技を併せ持つチャーレムがわざわざ”サイコカッター”ではっぱカッターを打ち消したのは、そのパワーの自身の現れだろう。

案の定、チコリータのダメージはチャーレムのトレーナーであるアビマル自身の予想を遙かに超えるダメージ量となっていた。

「チコッ!」

「一発でこんなに持っていかれるなんて!!」

かがみはその強敵・チャーレム相手に途方に暮れるしかない。

進化前とは桁違いの攻撃力と動きを封じるエスパー技の二つを併せ持つチャーレムにはっきり言ってかがみは勝てる気がしなかった。

が、当のチコリータはそんなことは微塵も思っていないようで・・・チャーレムをキッと睨みつけている。

それだけが、今のかがみの気持ちを前に向かせる源になっていた。

「あんたが、やる気なのに・・・こっちがヘッピリ腰じゃみっともないわね・・・!」

今の自分に出来ること・・・それは最後まで諦めないことだとかがみは心の中で確信した。


「チャーレム、もう一発”サイコカッター”!!」

「かわして、”はっぱカッター”!!」

チャーレムの念の刃をジャンプでかわすと、はっぱカッターで反撃にでる。

「レ…ム!」

「負けるな!”ねんりき”だ!」

チャーレムはチコリータの”はっぱカッター”の攻撃を受けながら、”ねんりき”でチコリータを捕らえた。

「チ・・・コ?」

身体の自由を奪われ、空中へと浮上させられる。

「チコ、落ち着いて”つるのむち”!」

かがみの声でチコリータは冷静さを取り戻し、体を浮かせられながらも、”つるのむち”でチャーレムの足を捕らえた。 「チャーレムの”ねんりき”の中で動けるとは流石・・・!止むを得ん、チャーレム、”ねんりき”を解いてつるのむちを振り払え!」

チャーレムは”ねんりき”を解き、チコリータを自由にすると足に絡まる”つるのむち”を振りほどいた。

相手が”ねんりき”で無理に攻めてきたところを狙うつもりだったかがみは思わず舌打ちしてしまう。

「チコ、”つるのむち”でチャーレムの腕を!」

しかし、かがみは止まることなくチコリータに攻めの指示を出す。

一度弾かれた”つるのむち”は見事チャーレムの両腕を掴み、攻撃を封じる。

「腕を封じたからなんだ!”とびひざげり”!!」

チャーレムはおかまいなしに跳び、膝を前に突き出し、チコリータに迫る。

「しまった!これじゃ避けれない!」

かがみの言う通り、チャーレムとチコリータ自身とは”つるのむち”でつながっている為かわそうにもかわせない。

「チコリータ、上に放り投げて!」

チコリータは一度、反動をつけると渾身の力で、チャーレムを上へと放り投げる。

そのパワーにチャーレムはバランスを崩し、こなた戦同様、またもや”とびひざげり”を外し、反動ダメージを受けてしまう。

「むむ・・・見くびっていたか!」

チコリータの底力には仮に格闘家でもあるアビマルの目を張るものがあった。

それはチャーレム同様だ。

チャーレムは目を閉じると神経を集中し、肩の力を一気に抜き、構えた。

「チコッ!!」

その、チャーレムの様子にチコリータも声を高々に気合いを入れる。

「チャーレム、”サイコカッター”!!」

「チコリータ、”はっぱカッター”!!」



チコリータの”はっぱカッター”は少しカーブを描き、”サイコカッター”の横を通り過ぎると、チャーレムの方へと向かっていく。 「よいコントロールだが・・・ジャンプだチャーレム!」

チャーレムは素早くジャンプで”はっぱカッター”をかわす。

と、そのチャーレムの目の前に同じくジャンプで”サイコカッター”をかわしたチコリータだ。

「レム!」

「チコー!!」

「ふん、勝負に出たつもりらしいが空中ではかわせまい!”サイコカッター”!!」

自由に動き回ることのできない空中でチャーレムは渾身の”サイコカッター”を放った。

「甘いわね!ウチのチコをなめないで!”つるのむち”!!」

チコリータは”つるのむち”で地面を勢いよく叩くと、その反動でさらに高く上へとジャンプした。

「2段跳びというやつか・・・!!」

「そのまま急降下で”たいあたり”!!」

「チーコォ!!」

かがみの指示でチコリータはムチをしまうと、そのままチャーレム向って勢い付けて落下していく。

「ふん!甘いぞかがみ・・・こちらもチャーレムの素早さを舐めてもらっては困る・・・”サイコカッター”!!」

「レーム!!」

チャーレムは上を見上げるとチコリータに狙いを定め、”サイコカッター”を放つ。

「”リフレクター”!!」

「な・・・?」

”サイコカッター”直撃寸でのところでチコリータは物理半減の不思議なベールに包まれ、”サイコカッター”を軽減した。

不意を打たれたチャーレムはお腹にチコリータ渾身の”たいあたり”をモロ喰らいすると、そのまま地面に体を打ちつけられた。

「チャーレム・・・!!」

アビマルの声はチャーレムには届かず、バトルフィールドに空いた穴の中で伸びてしまっていた。

「チャーレム戦闘不能・・・よってこのバトル挑戦者かがみの勝利とする。」

「よしっ!」

「やった!!」

ハジの声と共に客席のこなた達が立ち上がった。

そして、同時にチコリータもかがみにとびついた。

「チコ!」

「あはは・・・!!勝っちゃったわね?」

かがみはチコリータの頭を撫でながら、共に勝利の喜びを分かち合った。

「チャーレム、お疲れ様。全くしてやられた。さすが拙者の嫁だ。」

アビマルは疲れたように腰を下すと、感心したようにかがみを見る。

かがみもその視線を感じたらしく、傷付いたチコリータを抱きかかえながらアビマルに歩み寄った。

「あぁ我が嫁よ・・・いや今は挑戦者だったな。」

「今もいつでも、あんたの嫁じゃないわよ!」

性懲りもなく未だにそんなことを言い続けるアビマルにかがみはつい拳が出そうになったがこなたの「今は堪えて」という耳打ちに思いとどまった。

「全く、最初から”リフレクター”使っておけばいいものを・・・格闘ジムだったらかなり有利に事が運んだんじゃないのか?」

アビマルのその言葉にかがみは少し照れくさそうに視線を逸らした。

「ほら、こういう技こそ使いどきが肝心ってね?言うじゃない?」

かがみはいつぞや誰かから聞いた言葉をまんまアビマルに言った。

どうやらエミリィからの言葉を活かしたらしい。

「まぁ、今回はアビマルさんが”サイコカッターに執着しすぎたってのもあるね?」 こなたが横から冷静に、かのジムリーダー様の落ち度を指摘する。

それには少しアビマルのプライドも傷付いたか。少し黙り落ち込んでしまった。


そして、しばらくしてアビマルは、息を抜きながら笑みを浮かべると袖口からグレンバッジを取り出した。

しかし、パッと見た感じどこか形が違う。

かがみはグレンラガンに薬指がすっぽりと入りそうな輪が付いてる事に気づき、顔を青くした。

「これはジムを勝ち抜いた証と、そして拙者とお前の愛の証だと思って受け取って・・・」

「いい加減にしろー!!」

次はこなたセーフティがかからなかったのでかがみは心の底からの怒りをアビマルにぶつけることが出来た。

面白そうにその光景を見るこなたに反し、ハジとつかさは一歩・・・三歩は退いた位置からその光景を眺め、つかさは失笑、ハジは呆れた感じのため息をついた。

元の状態のジムバッジを受け取ったのはそれから一時間後のことだったが・・・



そんな一時間後ジムバッジと一緒にアビマルがなにやら大きな箱を持ってやってきた。

「かがみよ、そしてこなたとつかさ・・・。お前達に拙者から愛のプレゼントをしてやろう。」

「愛のプレゼント?」

アビマルのその言葉に全員して一歩退いた。

「ちょ!まて!そんな如何わしいものじゃないよ?ほらみんなこっち来て観て?それから話をしよう!」

まさかの反応にアビマルは多少なりのショックを受けたようで口調も少しどこかおかしくなっている。

アビマルの言葉に3人はそっと箱の中身を除いた。

つかさ以外、警戒は解くことはない。 そこにはモンスターボールが3つ。

中には既に入ってるようだ。

「・・・これ貰っていいの?」

「もちろんだ。」

こなたの言葉にアビマルは無駄に胸を張ってそう言った。

その瞬間、今まで警戒色の濃かった3人の顔色がパッと明るくなった。

そして、早速それらを取り出すと中にいるポケモンを出した。

「ブイ!」

「ブー!」

「イーブ!」

中から現れたのはしんかポケモンのイーブイだった。

そのレア度の高いポケモンに3人は歓喜の声を上げた。

「ほんとにもらっていいんですか?」

「あぁ・・・かまわん!」

「まさか、自分のイーブイが卵を産み過ぎて、その育てきれなくなった分のお裾分けとかじゃないですよね?」

「うるさい!黙ってもらっておけ!!」

得意げに胸を張りながら言うアビマルにこなたは容赦なくその裏事情に突っ込んだ。

どうやら図星らしい。

一応、こなたも感謝はしているので軽いジョークのつもりだったのだが・・・・

「イーブイは今のところ7種類に進化できるからね?好きなのに進化させるといいよ!もちろん進化させないっていう手もあるけど・・・。」

こなたの言葉にかがみはポケモン図鑑でイーブイの進化7種類を見比べた。

「うーんどれもかわいいなぁ。うーん迷っちゃう!お姉ちゃんはどうするの?」

「ま、おいおい考えるわよ!」

そう言うとかがみはさっさとイーブイをボールに戻しベルトに取りつけた。

そしてポケモンセンターでポケモン達の治療を終え、3人は早々に出発することを決めた。

「では、道中気を付けて・・・かがみ・・・君の旅の平和を祈っている。」

「うわ・・・まだ言ってるよこの人!命知らずなのかマゾなのか・・・。」

懲りずにかがみにアタックするアビマルに流石のこなたもそろそろ呆れを見せ始め、当のかがみはガチ無視をすることにきめたらしい。

「こなたさんたちは、これからどちらへ?」

場の空気を取り繕うように、ハジが落ち着いた口調でこなたたちに尋ねてきた。

その質問にこなたは親指と人差し指を突き出した状態の左手を顎に添えながら考えはじめた。

どうやら特には決めてなかったらしい。

そんなこなたを他所にかがみは逸早く答えを出していた。

「私はユノランシティに行こうかと・・・」

そのかがみの言葉にこなたは目を丸くした。

かがみが早くも行先を決めていたことではない。

かがみの「私たち」ではなく「私は」の発言にだった。

「かがみ、もしかして一人でそこに行くの?」

こなたの問いかけにかがみは少し申し訳なさそうに視線を逸らした。

そして、黙って頷く。

こなたの言葉とかがみのその様子に遅ればせながらつかさが驚く。

「えぇ・・・!なんでなんで?こなちゃんと喧嘩でもしたの!?」

「いや・・・別にそういうわけじゃないけど・・・ないんだけど・・・・」


「なんかライバル同士一緒に旅するのはなんか変じゃね?・・・みたいな?」

言い淀むかがみの言葉をこなたがかわって代弁した。

それにかがみは黙ってうつむいた。

しかし、それはそれでつかさにとっては大問題らしく必要以上に騒ぎ始めた。

「ダメだよお姉ちゃん!お姉ちゃん一人だと、どうやってポケモンフーズとかご飯とか作るの?お姉ちゃんポケモンリーグでる前に餓死しちゃうよ!」

妙に小馬鹿にしたような事を言ってはいるが、かがみにとってそれはそれで大きな問題でもある為あまり強くは言い返せない。

「・・・まぁその辺はなんとかやるわよ!」

「まぁ、かがみん前にモンハン誘ったら何個という肉を焦がしたけどね?」

「なんとかするの!っていうかあんなの所詮ゲームでしょ!?」

こなたの皮肉った発言も少し声を荒げてかがみは誤魔化して見せた。

まぁこの瞬間かがみの飢えフラグは成立したのだが・・・・

つかさからは自分がかがみについていくという意見も出たがそれでは意味がないとかがみは言い断った。

かがみ曰く、この一人旅は自分自身の成長の為でもありそのためにはつかさやこなたには甘えられないらしい。

こなたにポケモンのことを教えてもらって知恵をつけ強くなってもこなた以上にはなれない。

それが今回一人旅の真意の一つでもあるのだ。

それは例え妹のつかさであろうと同じことらしい。

姉の本心を聞きいれつかさはかがみの一人旅を渋々承諾した。


「まぁ私がこなたを超えたら、また一緒に旅でもしましょ?」

「おや、それはもう一生私たちとは旅をしないってことかなかがみ様?」

かがみの珍しく挑発的な態度にこなたはちゃんと乗っかってやる。

「分かんないわよ?もしかして結構さっさと抜いちゃうかもよ?」

「かがみ今日は攻めてくるなぁ・・・。どうしたの?」

いつもは受けのかがみというイメージを覆すような攻め口上にこなたはそろそろ戸惑ってきた。

そんなこなたを差し置いてかがみはハジからさっさとユノランの場所を聞き出した。

「で・・・ユノランに行きたいんですけどどう行けばいいですか?」

「ユノランですか・・・かなり遠いですが、近道を行くとすれば一度イノキ山へと戻っていただき、そこからイノキ山ミズハシティ方面出口から出てそこからミズハシティを経由したところからユノランへいけます。しかし、ここからだと2週間はかかりますが・・・」

「そんなにですか・・・?」

エミリィが既にユノランシティにいたのでもう少し近いものだと思っていたようで、その2週間という数字に少しテンションを落としてしまった。

だけど決まったからには行く覚悟を決めると己に言い聞かせた。

「じゃあ、こなた達は拙者のお勧めスポットを教えてやろう。ここから更に進んだところにスギトモシティがある。そこに電気タイプのジムがあるぞ?」

アビマルは気を利かしてか、かがみが向かうユノランシティとは正反対の街を勧めた。

その街にこなたは特に異論はないようだ。

こうして、それぞれの行き先をも決まり、改めてかがみとこなたは別れの握手をかわした。

つかさに至ってはしばしの姉の別れに泣き、かがみに抱きつきまでした。

「よし、じゃあいい?つかさ!バカみたいに毎日のように電話してくるんじゃないわよ?」

「かがみんも寂しがって枕濡らさないでね?」

「濡らすか!」

最後までこなたは「こなた」を突きとおし、他愛もないやりとりをかがみと繰り広げていた。

「それじゃ、また会いましょう!!」

「かがみんも気をつけて!またね〜!!」

「ばいば〜い!!お姉ちゃん!!」

かがみは大きく手を振ると親友たちに別れを告げた。

別れがよほど惜しいのかかがみはこなたたちが見えなくなるまで、決して背を見せることはなかった。

そして、やがてこなたの姿が視界から消え、ようやくかがみは前を向き、歩きだした。

かがみが向かうはユノランシティ、こなた達が向かうはスギトモシティ・・・。

この3人の旅はまだまだ始まったばかりだ。

続く


あとがき


どもぽちゃです。

うーん唐突でしたね?

かがみ離脱・・・。

もう少しうまく伏線なりなんなりやっときゃよかったと後悔。

えぇ一応・・・今回の話でらき☆ぽけの第1章終了です。

次回の2章からは新展開です。

ついにプルート団が本格的に動き出します!!

じゃ、また!!